立春に欠かせない、立春生菓子
写真:桜餅
立春とは、1年を24の期間に分ける二十四節気の1つで、春の始まり、新しい1年の始めを意味します。
「暦の上では春になり、」というような常套句を目にしたことがある人もいるでしょう。立春は2月初旬のため、体感としては冬そのものですが、気持ちの上では春の訪れを感じたいものですよね。立春をさらに楽しむために、和菓子は重要な役割を持ちます。
まず紹介するのが、「立春生菓子」です。立春生菓子は、立春の日の朝に作り、その日のうちに食べる和菓子をいいます。
具体的には、桜餅やうぐいす餅など、春らしい食材や彩りの生菓子が挙げられるでしょう。中でも桜餅は関東風、関西風の2種類があり、それぞれの地域で「桜餅」と呼ばれています。見た目は異なるものの、どちらも塩漬けの桜の葉2枚を使って挟んだもので、餡の甘みと葉の塩味が絶妙に絡み合います。
関東風の桜餅は上新粉生地で餡を挟んだもののためあっさりとした味わい、関西風の桜餅は道明寺生地のためねっとりとした味わいが特徴です。とりわけ桜の葉の香りがこれから訪れる春を想起させ、立春にふさわしい生菓子と言えるでしょう。
※桜餅について、もっと詳しく知りたい方は「和菓子辞典-桜餅」を参照してください。
立春大福で縁起を担ぐ
写真:豆大福
立春になると、「立春大吉」というお札を目にしたことがある人もいるかもしれません。厄除けの効果があると言われ、立春になると玄関や家の中にこのお札を貼ります。
これには由来があります。「立春大吉」という文字は左右対称で、裏から見ても「立春大吉」と読めることから、お札の貼ってある家に入った鬼が振り返った際、裏から「立春大吉」という文字を見たためにまだ家に入っていなかったと勘違いして出て行く、というものです。
そのため、「立春大吉」は厄除けの効果があると言われ、それにあやかって生まれたのが「立春大福」という和菓子です。もともと縁起が良いと言われている大福に立春大吉の厄除け効果も期待できるなんて、ダブルで縁起が良さそうな和菓子ですよね。春に新芽を出すよもぎで作られているものが多く、春らしい爽やかな風味が楽しめます。期間限定の和菓子としても人気です。
※大福について、もっと詳しく知りたい方は「和菓子辞典-豆大福」を参照してください。
椿餅で季節を感じる
立春は2月はじめですが、この時期の和菓子というと、椿餅が挙げられます。
椿餅も、立春にふさわしい和菓子といえるでしょう。2月に見頃を迎える椿はその鮮やかな花だけでなく、青々としたつややかな葉も、冬の寒さの中にあって目を楽しませてくれるものです。
椿餅は、この椿の葉を2枚使って餅を挟んだもので、葉を外して中の餅だけを食べます。道明寺生地に餡が入った餅であることが多いでしょう。
椿餅は道明寺生地のため、もちもちとした食感が魅力です。俵型の餅を上下に挟むように重ねられた葉は、上品で愛らしい見た目をしており、控えめな甘さと風味がお茶と良く合います。
さらに、椿餅は和菓子の中でも古い起源を持ち、源氏物語も登場することでも知られています。立春の和菓子として、また平安時代より楽しまれてきた伝統の和菓子として、椿餅で舌鼓を打ってみてはいかがでしょうか。
※大福について、もっと詳しく知りたい方は「和菓子辞典-椿餅」を参照してください。
イラスト:椿餅