涼やかな水ようかん
写真:水ようかん
新緑の季節を過ぎ、梅雨に入ってジメジメした時期に店頭に並びはじめるのが水ようかんです。
束の間の太陽が差し込むと少し汗ばむため、さっぱりとしていてのどごしを楽しめる水ようかんは、涼をとるのに最適です。
直木賞作家の向田邦子が、生前愛してやまなかったのも水ようかんだと言われています。包丁を入れた時にツンと角が立つ水ようかんが彼女のお気に入りで、毎年夏至の季節になると近所の和菓子屋さんに足を運んだといいます。
また、水ようかんは寒天とこしあんで作られるため、最近では動物性タンパク質を摂らないビーガンにも好まれるおやつとして再評価されるようになりました。
涼しげで舌触りの良い水ようかんは、子供からお年寄りまで幅広い年齢層に親しまれている夏至の和菓子として知られているのです。
※水ようかんについて、もっと詳しく知りたい方は「和菓子辞典-水ようかん」を参照してください。
無病息災を祈る水無月
写真:水無月
夏至は夏に至ると書いて夏の始まりを表す季語です。この時期は梅雨のどんよりした天気が続きますが、暦上ではすでに夏は始まっているのです。6月下旬ということもあり、1年のちょうど折り返し地点となります。
この時期の和菓子は神無月という和菓子を口にするという習慣があります。神無月の特徴は、半透明のういろうの上に柔らかく煮た小豆をあしらったもので、見た目にも涼やかな和菓子です。
また、一年の半分を過ぎた時期に当たることから、水無月を食べて半年の穢れを祓い、残りの半年の無病息災を願う風習が京都に残っています。
水無月の小豆には、古くから魔除けのおまじないとして用いられてきました。そのため、小豆を口にすることで穢れを祓い、新しい気持ちで残りの半年を過ごすことができるのです。
※水無月について、もっと詳しく知りたい方は「和菓子辞典-水無月」を参照してください。
紫陽花の生菓子
夏至の季節になると、日本人は自然と涼し気なものを求めるようになります。それは、和菓子にも同じことで、寒天を使って涼しさを表現したものが好まれるようになるのです。
この季節の代表的な生菓子の一つに、紫陽花をあしらったものがあります。寒天に食紅を混ぜて絶妙な薄紅色や薄紫色の餡や寒天をこしらえます。白豆の餡だけでなく、寒天を使用することで透明感を出し、見た目にも涼し気な紫陽花の生菓子に仕上げるのです。
なお、生菓子は日持ちがしないので、買ってきた当日に食べなければなりません。そのため、紫陽花をあしらった生菓子は梅雨の季節と重なる6月下旬にしか出回らないことから、毎年この時期の生菓子を楽しみにしている人が多いのです。季節ごとに和菓子を楽しむ日本人の感性は、とても風流ですね。