写真:代表的な栗きんとん
特徴
「栗きんとん」と言うと、おせち料理の一品としてお正月に食べるものを思い浮かべる人の方が多いかもしれません。
しかし、ここでご紹介する「栗きんとん」は、それとは全く違うお菓子です。
まず色ですが、まさに栗色と言いたくなるような茶色、あるいは黄色のような色味をしています。
ケーキのモンブランに使われている栗ペーストの色と言えば、分かりやすいでしょうか。
おせち料理の栗きんとんのように、くちなしを使って黄金色に染められたものではありません。
また、おせち料理の栗きんとんは、サツマイモなどで作られた餡の中に、栗が丸ごと散りばめられているという形が一般的です。
一方で和菓子の栗きんとんは、茶巾で上に向かってキュッと絞り上げられ、栗の形に整えられています。
ただし、この形状に関してはお店によって違いがあり、どれが正しいということはありません。
絞らずに栗の形に整えて模様を描いたものや、イガグリをイメージしてそぼろ状の栗ペーストを表面にまぶしたものなども、「栗きんとん」として販売されていることがあります。
歴史・由来
岐阜県の南東部に恵那地方と呼ばれる地域がありますが、その一部である中津川市が、栗きんとんの発祥とされています。
JR東海線の中津川駅前には、発祥の地であることを証する石碑が建てられています。
また、中津川市の菓子組合が中心となって開催する祈願祭もあります。この祈願祭の主旨は、「栗きんとんをより多くの人に食べてもらえるように」との願いを込めることです。まさに、栗きんとんと共にある地域ですね。
江戸と京都の文化が混じりある恵那地方では、古くから独自の文化が形成されてきましたが、江戸時代後期に入ると茶の湯に親しむ豪商が増え、お茶に合わせるための和菓子作りも盛んになりました。
その際、中津川が栗の産地であったことから、数々の栗を使ったお菓子が考え出されました。栗きんとんもそのうちの一つであったと言われています。
写真:おいしい栗きんとん
風味・味
おせち料理の栗きんとんはお正月の味ですが、和菓子の栗きんとんは秋の味覚です。
栗の採れる時期にのみ作られる限定品で、基本的には国産の栗100%と砂糖のみを使用しています。
シンプルな材料ですが、栗と砂糖しか使われていないということは、非常に貴重なものとも言えますね。
おせち料理の栗きんとんのように粘り気があるわけではなくホクホクとしており、栗の味がダイレクトに分かります。そのような味わいの秘訣は、「新鮮な栗を蒸して中身を取り出し、そこに砂糖を加えて炊き上げた上で一つずつ形を整える」という作り方にあります。
作り方も材料と同様にシンプルで、簡単に作れるようにも思えますが、実は大変に手間がかかる作業です。この手間暇をかけた作り方が、栗の味と魅力を存分に引き出しているのです。
お店によって、加える砂糖の量や蒸し上げる時間が微妙に異なり、独自の舌触りや風味を生み出しているので、秋になったら栗きんとんの食べ比べをしてみるのも、楽しいでしょう。
和菓子分類
製法での分類:蒸し物
水分量分類:半生菓子
主な材料
栗、砂糖
※一般的な材料を記載しています。詳しくは製造元に問い合わせてください。
カロリー(概算)
栗きんとん100gで、170kcal